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  • 執筆者の写真Michie

2019年3月茶会「モロッコ」をテーマに

更新日:2019年9月5日


年二回恒例の茶会が今年も三月に終わり、あっという間にひと月経って、ゴールデンウィークに突入しました。


私にはもう遠い昔の出来事のようになっているお茶会。


他の何物にも目をくれず、ただお茶会だけを見つめた日々がひと月半ほど続くので、その間周りの世界は時間が止まっているのではないかと思うほどで、お茶会が終わってまた時計の針が動き出すと、「えーー!知らないうちに春が来てるんですけど!」「今日何月何日?」みたいなことになるのです。

私はお茶会の間中、そのテーマの世界にタイムスリップ状態になってしまうのです。


今回のテーマは「モロッコ」でした。

そして今年の1月、モロッコに行きました。生まれて初めてアフリカ大陸に足を踏み入れました。


いつか旅行に行くならモロッコに行ってみたい、という憧れがありました。遠い国、強烈な色使い、アフリカの自然、そんなことしか知らなかったけれど。

「エキゾチックモロッコ」、旅行会社のパンフレットに書いてあったのです。エキゾチック!ああ、もう飛びつかずにいられない。

モロッコに行くことに決めました。


各都市がまるで別の国かと思えるほど豊かな特徴を持つモロッコ。どの都市ももう一度訪れないと、満喫し足りない、という魅力を抱えています。


 何もかも全てが青い街シェフシャウエン、ピンクの建物の大都会マラケシュ、何処まで行っても続くサハラ砂漠、強い日差しのもと歴史を残すローマの遺跡、店がひしめき世界一迷うという迷路のフェズ、今なお残る泥のレンガで出来た要塞の街アイトベンハッドゥ、、、どれもその美しさと魅力に甲乙つけがたい。



 アザーンと共に始まるイスラムの朝。朝早く大音量で祈りの合図が始まり、また静寂が訪れると、たくさんの鳥のさえずりが聞こえだします。巨大なサボテンや咲乱れるバラ、強烈なピンクのブーゲンビリアの中庭に、アフリカの自然のパワーを感じてなりませんでした。


モロッコでは、オーガニックとか、スローフードとか、エコロジーとか、ヴィーガンとか、そんな言葉はまだ関わりがないように思えます。

 現在もスローライフでオーガニックな暮らしをしているから。豊かな大地では、農薬はほとんど使われず、肥料も羊の糞尿を使ったりしていると聞きます。


 動物を育て、神に感謝して殺し、決して無駄にしない。大地を汚さないよう食物を育て、収穫し、また次の年の豊作を祈り、大切に土地を耕す。

 市場では、今朝殺した動物が並び、今朝取った魚が並び、今朝焼いたパンが並ぶ。こぼれ落ちそうにつまれたたくさんの種類の果物や、神に備える美しい菓子、色とりどりの絨毯、、、人々は豊かに生きているのです。


 伝統的な生活道具は現在でもとてもシンプルでナチュラル、そして美しい。素焼きのタジン、石のすり鉢、木の器、鉄の鍋、植物の葉で包んだり縛ったり。使い込むほどに美しくなる自然素材との暮らしは、現代最も豊かだと言うべきかもしれません。

 今でこそ、電気が通り、電気ポットやガスレンジ、テレビやエアコンの生活が当たり前になってきていますが、市場へ行くとそんなことは感じさせないくらい、伝統的な素材で満ちていました。



 私たちの国では、いえ、どこの先進国でも、プラスチックやビニールや、便利な道具であふれています。毎日山のように消費するラップ、スーパーで何枚も使うビニール袋、プラスチック容器のインスタント麺、サプリに栄養ドリンク。あらゆる食品はプラスッチクに覆われています。保存料に添加物。どれも自然な素材ではなく、私たちの体が本来もっている素材でもない。体が消化したり、排出したり、地球の土に戻ったりするには長い年月がかかる素材。

 地球に負荷をかける暮らしをしてまで、早くて安くて便利、はそんなにも大切なことだろうか、と思わずにはいられません。体への負担も同じ。


 モロッコには昔ながらの暮らしをする人が数多くいるそうです。

 絨毯を織ったり、オイルを石臼で挽いて搾ったり、土で作った釜に薪で火をおこし料理をしたり。主食は全粒粉のパン、お金がないときは野菜だけでたっぷり煮込んだタジン、大切なお客が来るときはヤギの肉を焼いたり、クスクスにラクダのミルクをかけたり。

 

 ハーブやスパイスは彼らの薬。都会にも、漢方屋のようにハーブとスパイスの薬局があります。料理のためだけではなく、薬としても使われています。荒れた唇には、サフランとジャスミンの入ったバームを。シミやシワには、アルガンオイルにアロエが入ったクリーム。サボテンオイルや、ローズウォーター、ガスールでパックもする。ハマムで垢すりをするのも大好きなキレイ好きな女性たちは、アルガンオイルを体にもぬったりして美しさを保っています。

 パワーある大地で育てた植物は力強く効力も強い。農薬も使用せず、添加物も入れずに作る化粧品は、使う人に自然の恩恵を与えるだけでなく、様々な分野でモロッコ女性に社会での仕事の場を与えています。

 

 その土地土地に合うものを育て、自然と共存し、その恵で毎日を生きる。本当の幸せや豊かさは、日々を大切に生きることだとモロッコは教えてくれました。


 贅沢な幸せは、目の前の自然の中にあり、私たちの手の中にある。私たちが地球のちっぽけな一部だと気付いたなら、今できることが、いま感じるべきことがわかるかもしれない。

 

 私たちは地球なしには、太陽なしには生きられない。その恩恵を受けているにも関わらず、壊すことばかりを平気でしていやしないだろうか、地球を人間のものだと思っていやしないだろうか、と思うのです。

 

 動物を奴隷のように閉じ込めて育て、大量に捨てるにも関わらず、大量に殺していく。地球の資源を根こそぎ取り、ゴミで汚し、地球に還ることのできない化学製品で固められた生活。とうとう栄養は抽出物で補おうとしている。保存料と添加物の食品に囲まれ、忙しいを口癖にインスタントを愛用し、次から次へと新しい贅沢を求め、病気になったらあとは薬と医者まかせ。


 私たちは果たして心も体も健康だろうか。。。本当に私たちは忙しいのだろうか。。。と思わずにはいられません。


 生き生きとした表情、強い生命力、ハリのある心、たくましく生きる姿勢。そういう人々に憧れる私です。化学製品で時間をかけて丁寧にお手入れしたお肌も、マネキンのように美しくなるかもしれない。それでも私は、大地の恵みや太陽の力を体に取り入れるほうに魅力を感じるのです。


 地球を殺さないために、今私のできる小さなことは何かな、そう考えるのです。


 モロッコ、ありがとう。






 

 





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