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  • 執筆者の写真Michie

フランスへの旅 その2

パリで通ったヴィーガン料理学校、教えてくださったシェフはパリの三ツ星レストラン「アルページュ」でシェフをしていた方、オリヴィエ。ユーモアたっぷりで才能に溢れた素晴らしいシェフ。

料理している様子を見るだけで、料理への愛に溢れているのが一目瞭然。

こういう人に習うって幸せだなぁ、とひしひしと感じました。


シェフ・オリヴィエの大切にしていることは、料理を楽しむこと、地球に優しくあること、オーガニックの素晴らしい野菜を余すところなく味わうこと。


料理を楽しむこと、それはつまり、料理する瞬間だけでなく、準備から買い物、掃除、レッスン、調理、盛り付け、全てにわたっていると私は感じたのでした。

これはもはや調理という一単語では収まらない。

つまり、生きることを楽しんでいる。確かにそうだと感じるのです。



フランス語の堪能でない私は、朝九時半から始まって二時過ぎくらいに前半の授業が終わると、仲間が休憩にカフェに出かける中、居残って勉強していた日がありました。


シェフがいるから質問できるし、午前のわからないところだらけを埋めないと、午後の授業についていけないし、、、と必死。


私が泣きそうになりながら辞書を引き引き勉強している中、シェフはキッチンの掃除を始めます。「クラシックかけていい?好きなんだよねー」と言いながら、音楽をかけて鼻歌を歌いながら、モップでゴシゴシ。なんか楽しそう。


みんなほんとに地面にゴミを落とすし(室内靴文化だからって、信じられない風習)、流しもギョッとするほど汚すけど、シェフは、さっさと片付けて、こんなことどうってことないよ、って様子。「秘密教えようか?みんな洗剤使いすぎるから、僕薄めてるんだよねー、ほらこうして。ははは。」薄めすぎて、泡立たなくて、みんなザブザブ使いそうにも思うけれど、シェフは満足げ。


掃除が終わるとすぐに午後のメニューの準備にとりかかるシェフ。


「わかんないとこあるかな?」合間合間に聞きにきてくれ、「この間テレビでインタビューされて出たんだよねー、見る?」とか言って見せてくれるシェフ。

「シェフ、すごーい!」というと、照れて「いやー、見せちゃったけどさ、後でみんなにもみせようかと思ってさぁ」なんて言って恥ずかしそう、でも嬉しそう。

「じゃ、午後の買い物行ってくるから、留守番よろしく!みんなが来たらボタン押して扉開けてあげてね」と出て行ったけれど、どのボタンか聞いてないんですけど、シェフ。。。


午後の授業が始まってすぐ、みんなに例のビデオを見せるシェフ。

褒めるインタビューアーに、「どうもご親切に」なーんて低い声で静かに答えるシェフにみんな爆笑。シェフは恥ずかしそうに下を向いて頭をかいている。

でもみんな、シェフすごーい、と心から尊敬している。ビデオが終わると拍手喝采。

大げさじゃない?と思いつ、このほのぼの幸せな時間、たまらないなぁ、と感動していた私。


ブロッコリーやニンジン、様々な野菜を扱って調理する私たちに、シェフはそのうち、「シェフ・ブロッコリー、これやって!」「シェフ・キャロット、これ刻んで」なんて言い出す。「ウィ、シェフ!」ちなみにそのときの私は、シェフ・割れたエンドウ豆、、、


みんなそのうちお互いを「シェフ・エンツォ、これお願い」「シェフ・ルドー、これ取って」なんて言い出して、もうみんなシェフ気取り。

それでも料理と好奇心は真剣。「今なにやってるの?」「それ味見させて」「どうやって切ったのかもう一度見せて」「何分これ火にかけてるの?」「これは何が混ざってるの?」

質問はシェフにだけでなく、仲間同士でも絶え間なく、知りたい知りたい知りたい知りたい、みんな私と一緒。


真剣に調理して、200%の好奇心ではちきれんばかりのレッスン。でも、笑いも笑顔も絶えないキッチン。ミキサーが轟音で鳴り響いて、暑さで汗がしたたりおちる中でも、ジョークが飛び交っている。


試食タイムのみんなの嬉しそうなこと。そして真剣なこと。

黙って香りを嗅いで、デザインを見て、味わい、食感を楽しみ、コンビネーションを吟味する。シェフに質問したり、作った仲間に質問したり、自分の意見を言ったり。

私は理解するのに必死だけれど、この時間がまた共有の喜びタイム。食事を共にする喜び。意見をし合う喜び。繊細な感覚をもつ大切さを目の当たりにして刺激を受ける喜び


二日目からビズ(頰をつける挨拶)してくれた仲間に、「会って二日目からビズってするの?」と私が聞くと、「普通はしないけど、同じ情熱もった仲間じゃん、深い仲間だからさ」とみんな。帰りもみんな一緒に駅までおしゃべりして歩く。改札口でビズして帰る。そんな濃い毎日に、薄味日本の文化に慣れている私は(しかも若き学生時代なんて遠の昔で忘れてしまっている)、なんだこの濃さは!と度肝を抜かれるけれど、慣れないフランス生活に、できないフランス語、ついていけない授業に、暑すぎる気温、寝不足の毎日、そんな1日1日を暖かく幸せ一杯にしてくれた、熱い仲間たちでした。


学校が終わると夜の九時近く。十時だった日も。

まだ薄暗くて怖いほどではないけれど、一緒に歩いてメトロの駅まで帰ってくれる仲間のありがたかったこと。



料理って、幸せ。


仲間って、幸せ。


ありがとう、帰ってきて二ヶ月経つけれど、今だに感動は心の奥で光っている。


そして全てに感謝の言葉しか出てこない。


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